突然ですが、みなさんはTV版エヴァンゲリオンで、第十五使徒アラエルが、エヴァ2号機パイロットの惣流・アスカ・ラングレー氏に、衛星軌道上から、謎の光によって精神攻撃をかけたことを覚えておられるでしょうか?

光る鳥のような形状で衛星軌道に浮かんでいるアラエルが、透明な、むしろそれを浴びると気持ちよさそうな雰囲気すら感じる、暖かみのある光を、地上のアスカに放射する。

その光を浴びたアスカは過去の様々な嫌なエピソードを思い出し始め、それによってエヴァの操縦が不可能になってしまう。

リツコやミサトたちはアラエルの光を「使徒の精神攻撃ね」と理解する。

またアスカはその精神攻撃によって「私の心が汚されちゃったよ」と言う。

だがアラエルの光は本当に精神攻撃だったのだろうか? 

本当にその攻撃によってアスカの心は汚されてしまったのだろうか? 私はそうは思わない。

なぜなら、光を浴びてアスカの心の中に蘇る過去の記憶は、すべてアスカが実際に、過去に体験したもののようだからである。

確かに、思い出すのは辛い記憶が人の中には沢山眠っている。だがそれは、その人の心の中に最初から入っていたものである。

アラエルの光は、ただそれを、意識の上に浮かび上がらせたに過ぎない。

だから、アラエルは別にアスカの心を汚してなどいないのである。

アスカの心の中には、最初からずっと、見たくない、嫌な記憶が入っていたのである。

つまりアスカの心は最初から汚れていたのである。

光を浴び、「私の心が汚されちゃったよ」と嘆くアスカ。

その嘆きはあたかも、大量のゴミを中に押し込んで隠していた押入れの扉を誰かに開けられ、それによってゴミが押し入れから部屋に溢れてきたとき、「私の部屋が汚されちゃったよ」と嘆くことに似ている。

その場合も、やはり部屋は最初から汚れていたのである。その汚れは、押入れという部屋の一部分、目に見えない部分に隠されていた。汚れは最初からそこにあり、扉が開くことによって、単にそれが目に見えるようになっただけにすぎない。

だからアスカはこう嘆くべきであった。

「隠していた汚れが目に見える部分に溢れてきちゃったよ」

アラエルの光は、アスカに、自分の心がいかに汚れているのかを認識させてくれた、有用な光であった。アスカはむしろ、あの光をより長時間、浴び続けるべきであった。そうすれば、その光がアスカにより多くの、過去へのクリアな認識を与えてくれたかもしれない。

また、苦しいのをもうちょっと我慢して光を浴び続ければ、おそらく過去の嫌な記憶は光によって分解され、浄化されていったのではないか。そう思わせる暖かみが、アラエルの光には感じられる。アスカはあと三十分ぐらいあの光を浴びているべきではなかったか。そうしたらアスカはメンタルヘルスを向上させることができたのではないか。

ちなみにアスカちゃんの「心の汚れ」なるものは、そんなに根深いものではなく、本人がそれにまっすぐ向かい合い、それを癒やす気になれば、数ヶ月ぐらいで綺麗になるものであると私には感じられる。両親とのアレコレを癒やすのは、ヒーリングの基本であり、それは速やかに多くの良い結果をもたらす。

またシンジ君などは、強く健康な心を持っており、それは何も汚れていないと感じられる。ただ彼は、両親や周囲の感情の乱れを、無意識的に自分のものとして吸収し、自分の責任として抱え込んでしまう傾向を持っているように思える。その傾向を変えると、いろんな人に無用に責められるというパターンがなくなるはずだ。