あなたは崖に向かって車を走らせている。

同じ方向に向かう道を、無数の車が走っている。

このまま直進すればやがてあなたは他の車と同様に、崖から落ちて死ぬ。

そこであなたはあるとき、方向転換を試みる。

 

しかし方向転換するには、様々な障害がある。

車には慣性がついており、急に止まることはできない。

また、他の車が自信満々に崖に向かって走っているため、一人でその流れから外れることは不安だ。

 

だが何にせよあなたはいつでも車を止めて方向転換することができる。

なぜなら車を操縦しているのはあなたであり、あなたが望めば車をどの方向にでも向けることができるからだ。

 

だからあるとき、あなたは車を止め、それを方向転換し、崖とは真逆の方向に向かって走り始める。

それはこれまで走ってきた道を逆走するということであり、自分の出発点に向かって走るということである。

最初それは時間を遡るような体験となるだろう。

 

その逆走の果て、やがてあなたは出発点に到達し、さらにはそれをも超えていく。

出発点を超えたあなたは、かつて一度も通ったことのない道を走っている自分に気づく。

かつて一度も通ったことのないその道を走ることが生である。

それは無限に続いていくことをあなたはその新鮮なドライブの中で悟り始める。