『NHKにようこそ!』ファンかつ自己啓発文章マニアに捧げる本シリーズもとうとう8個目まで来た。

意外なことに思われるかもしれないが、ひきこもり的性質を持つ者は、自己啓発文章マニアであることが多い。何を隠そう私もその一人だった。一時期は書店の自己啓発コーナーは全部読んだのではないかと思われるほど大量の自己啓発書を読んだものだった。

やっぱり自己を啓発するにあたり、そのための方法を書いてある本をたくさん読むことはちょっと大切だ。

「自己啓発書なんて読んでも意味ないよ。単に意識が高くなった気がするだけだよ」などというシニカルな声が様々な方面から上がっている。だが自己啓発書を笑うものは自己啓発書に泣くということわざもある。

本ホームページでは、今後もこのような、自己、すなわちセルフを、啓発、すなわちエンライトメントする文章、すなわちセルフエンライトメント・テキストを暇を見て書いていきたいと思う。

さて本日紹介する失敗法則はこれだ!

失敗法則その8.失敗を恐れる

これはもう、失敗法則の中の親玉といっても過言ではない奴だ。

失敗を恐れ、それを回避するために考え過ぎて、自分の思考に絡め取られて身動きが取れなくなり、結局何もできず時間だけが過ぎて自己嫌悪の海に沈む、というのが『NHKにようこそ!』の佐藤くんの鉄板失敗パターンであったように思う。

また、どの自己啓発書を見ても、「失敗を恐れてはダメだ」、「失敗を恐れたら死ぬ」、「刃を恐れるな」、「前に踏み込めば吉」、「この先生き残るにはリスクを滝のように浴びるべし」、と書かれている。よってこの失敗法則を反転させた成功法則は以下のようになる。

成功法則その8.リスクを恐れるな!

しかしそうは言っても、何事もバランスが大事であると思う。明らかに失敗する行動を盲目的に繰り返すのは、自傷行為と変わらない。

では、どんなときにリスクを避けるべきであり、どんなときにリスクを受け入れて恐怖に立ち向かい行動を起こすべきなのだろうか?

我々はいつどこで何をすべきなのだろうか?

まあ、それは直感で、難しく考えなくても、なんとなくわかるんじゃないかなと思う。

直感で、何か、したいことが思い浮かんだときは、できるだけそれをやった方がいいと思う。

そうすれば自分のことが誇らしくなるし、何か、もしかしたら目に見えない、精神的なものかもしれないが、きっといいものが手に入ると思う。たとえば温かな、優しい気分、というようなものが。

ところで先日のことである。

私事で恐縮だが、私は渋谷でブラブラしていた。

夜になり、疲れたので、でっかい交差点の前にある、腰をおろせるスペースに座って休んでいた。

「はー」

私の目の前をものすごいたくさんの人々が流れ過ぎていく。

(いろんな人がいるな)

私はそのようなことを考えながらぼーっとしていた。

そんなあるとき、ふいに私の隣に、泣いている女性が腰を下ろした。

女性はハンカチでしきりに目元を拭っている。

しばらく迷ったあと、私は声をかけた。
「大丈夫ですか?」
女性は泣きながらうなずいた。

それから5分経過した。女性はまだ泣いていた。

しばらく迷ったあと、私は声をかけた。
「大丈夫ですか?」
女性は泣きながらうなずいた。

さらに5分経過した。

私はしばらく迷ったあと声をかけた。
「大丈夫ですか? もしかして花粉症ですか?」
女性は泣きながら首を横に振った。少し笑顔が見えたように思えた。

ふと私の脳裏に、何ヶ月か前に書いた小説の内容が蘇った。この小説の中で、主人公は泣いている女の子(実は凄い天使)を慰める。

背中をぽんぽんと軽く叩き、よしよしと声をかけて。

私もそのメソッドで、隣で泣いている人を慰めることにした。

だが彼女はいつまでも泣き止まなかった。
だから私もいつまでも彼女を慰め続けた。

寒さに耐えきれなくなり、近くのドーナツ屋に二人で歩き始めるそのときまで。いつまでも、いつまでも。

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