長い。あまりにも長いこのシリーズ。もう途中で投げ出してしまいたい。でもまあ最後まで書いてみる。

『NHKにようこそ!』の主人公、佐藤君にかぎらず、ほとんどの人は、今の自分の存在のありようを肯定していない。そのため、今の自分が欲している行動を肯定していない。むしろそのような行動の逆をすべきであると思っている。

  • 自分がやりたいと望むこと、自分が楽しく感じること、それをするとワクワクするだろう行動=悪
  • やると苦しく感じられること、やると自分が消耗していくこと、それを実行するのに苦労や努力が必要となる行動=善

このような逆転した価値観が心の中に根付いている人は驚くほど多い。そのような人は、自分が何気なく望む、様々な願望や衝動を抑圧するか、罪悪感とともに、申し訳ない気持ちでささやかに実行する。そして、重荷を担ぐような、やりたくないことを、まず最初にやるべきであるとして自分を鞭打つ。

だがそのようなことでは気分は滅入るばかりである。まずいちばん先に、やりたいことを、堂々とやってこそ、気分は晴れやかになっていく。

失敗法則その7.楽しみやワクワクすることの実行に罪悪感を持つ

人生の幸せは今この瞬間にあると、様々な賢人が言っているが、それは本当だ。今この瞬間、幸せになる行動を見つけ、それをひとつひとつ実行していけば充実感や満足感や達成感が感じられる。

そのように次々と目の前に現れる楽しいことに意識を没入していけば、時間感覚が変わっていき、いわゆるひとつの『ゾーン』『フロー』状態へと意識は突入していく。その中ではシンクロニシティが連続して生じ、様々なアイデアが次々と浮かび、物事はスムーズに、勝手に良い方向へと流れていく。

そのような自然な流れを全力で止めるには、今日紹介する失敗法則『楽しみやワクワクすることの実行に罪悪感を持つ』を使えばいい。

毎瞬、ふと心に浮かぶ、ちょっとしたやりたいことの感覚を、思考によって分析し、それをすべきではない合理的理由を考え、その感覚を抑圧することで、自分の直感からやってくる、やりたい行動のシグナルを無視することができる。

そのようなシグナルを無視することで、自分の生活の方向は、本来進むべき、もっとも抵抗の少ないラインから、苦労の多い、抵抗の強いラインへと、大きく逸脱していくことになる。

よく佐藤君は、いやらしいゲームのシナリオを書いているときなどに、「今、俺はこんなことをしている場合なのか? こんな無意味なことはやめて、もっと他のすべきことに目を向けるべきではないか?」などと自問しては、シナリオ執筆から気をそらしてしまっていた。そして『目を向けるべき、リアルな現実』なるものに意識を向けては、その都度、恐怖と無力感を感じ、萎縮して、せっかくの精神エネルギーを失っていた。

しかしそのとき、シナリオ執筆作業が気持ちよく感じられ、集中、没入できるものであったなら、いくらでもその作業に意識を没入させ、それをやり続ければよかったのだ。

そうしてこそ精神エネルギーは高まり、人生の中に望ましい変化を起こす渦を作り出すことができたのだ。

もちろん、『楽しみ』と『惰性的習慣行動』、『ワクワクすること』と『麻薬的中毒行動』の間には大きな違いがある。

人によっては、そのとき『何かのゲームをする』というようなことが、心に栄養を与える楽しみであり、ワクワクすることであるかもしれない。

だが別の人にとっては、『何かのゲームをする』という全く同じ行動が、ただの惰性的な習慣であり、楽しみどころか、むしろ心のエネルギーを奪っていく、麻薬中毒のような害のある行動かもしれない。

どの行動が自分にとって、良いエネルギーを与えてくれる『楽しみ』であり『ワクワクすること』なのか、そして、どの行動は自分にとっての『惰性的、麻薬中毒的行動』なのかは、その行動の外面から機械的に判断することはできない。

これは良い行動であり、これは悪い行動である、などと、表面を見て判断することはできない。

自分の本心が、どのような行動を求めているのか。今、何をすればもっとも自分が高まる行動なのか。それは、その人が、自分の心の内側に意識を向け、主観的な感覚を用いて、直感的に判断するより他はない。

だがそのような主観的な直感能力は、長年の社会的な学習の果てに、曇らさされている事が多い。

快、スムーズさ、滑らかさ、いい感じ=悪

苦労、葛藤、努力、難しさ、激しさ=善

というような転倒した価値が脳にしっかりとプリントされ、焼き付けられているとき、自分の直感的な判断能力が発するシグナルは、必ず無視されてしまう。

直感的判断能力から生じる、「これを自分はしたい気がする」というささやかな衝動は、「なんとなく良さそうな雰囲気」というような、ふわっとした心地よさを伴った感覚に過ぎない。結果、それは容易に思考回路によって否定されてしまい、他の、より多くの困難を生じる別の行動が採用されることになる。そうして人は自分の思考回路に騙されるのである。

しかし勇気を出して以下の成功法則を実践することで、人生はだんだんいい方向、面白い方向、明るい方面へと流れていく。

成功法則その7『ありのままの自分が望む、ワクワクすることをする』

だがこれは、言うは易し、である。

毎瞬毎瞬のワクワクすることの実行には、自分の主観的な感覚への、極めて意識的な注意が必要になる。またその刻一刻の実行には、いわゆる『サレンダー』的な、能動的受容状態とでも言うべき、大海に安心して身を委ねるが如き態度の養成が必要になってくる。

そのような態度や生活スタイルは意識的に時間をかけて養うべきものであって、一度や二度や三度や百度の、突発的なレット・イット・ゴーで、どうなるものでもない。

しかしとにかく自分を信じるしかないし、いらないものは手放して、ありのままの自分になるしかないし、ワクワクすることをするしかない。しかも継続的に、永遠に。