午後十時五十五分、バスの後部座席に乗って自宅に向かう途中、ポケットのiPhoneがアラームを発する。

 私は隣に座る友人に、これから『ポータルオブライト・インターネット瞑想会』を五分間行うが、気にしないで欲しいと伝える。

「インターネット瞑想会? そのiPhoneでなんかやるの?」

「いや。ただホームページで瞑想の時間を告知して、ただその時間に、瞑想をするだけ。僕は毎日、その時間に本当に瞑想してるけど、他に参加者がいるのかはわからない」

「意味なくないそれ」

「そんなことないよ! 海外のいろんな瞑想サイトでは、こういった形式の瞑想会がたくさんあって」

「それに参加すると何かいいことあるの?」

「一人で瞑想するより楽しいし、瞑想を習慣にしやすいはずだ。それに瞑想とは、実は目に見えない心の内側での、他者および世界との繋がりを再構築するためのワークという側面が強くある。だから遠隔的な瞑想会というものは瞑想というワーク本来の意味合いに沿ってる」

「よくわからないけどロマンティストなんだね」

 時間になったので私はバス車内で瞑想を始める。いつも通りライトボディを出し、それによって心の中の瞑想会のフィールドを光で包む。もし誰か瞑想会に参加している人がいたら、その人にこの美しい光が届くように。平和や豊かさや楽しさがこの光のフィールドに満ちるよう意図しながら。

 五分経ってまたiPhoneがアラームを発し、瞑想会の終了を告げる。

 隣で友人はスマホをいじっている。バスは夜道を走って行く。