思考は現実化する。
逆に考えれば、目の前に現実化されているものは、思考から生じている。
目の前にあるありとあらゆる現実のパーツ、それは自分の思考のシンボルである。

それらのシンボルを見れば、自分の思考に気づくことができる。
現実の中に、何か望ましくないと感じられる事物があるとき、それは自分の思考の中に、何かしら不調和な思考があるということを表している。
よって、その不調和な思考を、調和のとれた思考に書き換えることができたとき、現実の中にある、何か望ましくない事物もまた変化していく。

しかし思考を書き換えるとは、単にアファメーションを唱えることでもないし、知識を蓄えることでもない。
「私は金持ちです」
「私はモテます」
と五億回唱えても、素晴らしい知恵が書かれている本を数万冊読んでみても、もちろん何かしらの変化はあるかもしれないが、それだけでは、本稿で描こうとしている、特殊な、魔法のような効果、永続する、反動のない深い効果を得ることは難しいかもしれない。

思考を書き換えるとは、自分の人格という複雑なオペレーティング・システムの、ソースコードを書き換えることである。その領域を、日常的な意識で触ることはできない。日常的な意識で触ることができるのは、システムに不可逆的な変化が起きないレベルの、コンピュータの例えで言えば、デスクトップ画面ぐらいのものでしかない。

自分の人格のオペレーティング・システムのソースコードを書き換えるには、それ専用の、特定の意識状態に入る必要がある。いわばそれは、意識を『通常のユーザーモード』から、『システムの管理者モード』に切り替える必要があるということである。

意識状態を『システムの管理者モード』に切り替えたとき、初めて効率的に、そのシステムの深いレベルのコードを自在に書き換えることができるようになる。そのコードは、現実を生成するコードである。よって、それを自在に書き換える力を得るとは、自分が体験する現実を、自在に書き換える力を得るということである。

そのための鍵は『システムの管理者モード』に意識状態を切り替えることである。

そのための最初のパスワードは、意思である。自分を変えるという意思。深いレベルで、自分を変えるという意思。その意思を持って初めて、管理者モードの秘密が、その人に少しずつ解き明かされていく。