創作とは、以下の三つのフェイズの繰り返しで進展して行きます。

・何かを作る
・発表する
・レスポンスを得る

発表し、レスポンスを得ることの繰り返しで、目に見えない創作エネルギーのようなものが溜まっていきます。この「創作エネルギー」という目に見えないパラメータを高めることで、より大きな影響力を持った創作活動ができるようになっていきます。

上記の三つのフェイズをもっともミニマルな構成で行う場合は、作ったものを自分だけに向けて発表し、自分からのレスポンスのみを受け取るということになります。

このような、自分ひとりだけで完結する創作のサイクルによっても、作品を発表し、レスポンスを受け取るという輪を完結させることができ、それによって創作エネルギーを高めていくことができます。その際には当然のことながら、自分の作品の悪いところに意識を向けるのではなく、良いと感じられるところに意識を向け、その良さの感覚を内面的に楽しむ必要があります。その楽しみの感覚が、作品の作者、つまりこの場合は自分に返ってゆき、作者の「創作エネルギー」を高めていくわけです。

ですが、このようなフィードバック回路を作るには、作品を完成させ、パッケージとしてひとまとまりのものにしたうえで、自分に向けて公開するという工程が必要になります。どうせ自分しかその作品を味わうものはいないのだから、未完成のままでもいいだろうということにはなりません。

未完成のまま、パッケージングされていない作品は、創作エネルギーを高めるどころか低めます。つまり「なんとなく気がかりだな」「なにかが終わっていない気がする」という未消化な感じが心の中に残り、それによって新たな作品を作る気力がだんだん減っていってしまうということです。

何かを作ったら、できれば完成させて、パシッとパッケージングすることが大事です。仮にその作品を鑑賞する者が自分一人であったとしても、その作品にタイトルをつけ、必要であれば額装するようなことをして、完成品の形にすることで、それは完成した作品としてこの世に生まれることになります。

完成のあてがない中途半端な断片のようなものは、定期的に整理し、思い切って捨ててしまったほうがいいかもしれません。

といっても毎回でかい作品を作るべきであるということが言いたいわけでもありません。このブログ記事も、記事として投稿したからには、ひとつの作品です。そういった、小さくても、ひとまとまりの形にして、受取手の前に公開することが大事であるということです。

作品を公開すると、作品を鑑賞した人から、その作品の作者へと、さまざまな目に見える形での、あるいは目に見えない形での、物理的、精神的なレスポンスが発生します。それを受け取ることで、目に見えない創作エネルギーが作者の心の中に高まっていきます。

そのような創作のフィードバックループをセッティングする一番簡単な方法は、やはり発表する場を持つと言うことではないかなと思います。

ただここで注意としてあるのが、当然のことながら、不特定多数の人の前に作品を発表したとき、望ましくない、ネガティブなレスポンスも返ってくることがあるということです。これに関しては、自分で意識的に、レスポンスをフィルタリングすることによって対応することができます。

つまり自分にとって望ましいレスポンスのみを受け取り、必要でないレスポンスをスルーするということです。

一般論として、クリエイターにとって受け取ることが望ましいレスポンスをまとめてみます。(これは目に見える形を取るときもあれば、目に見えない雰囲気として伝わってくることもあります)

・自信を高める役に立つレスポンス
・情熱、やる気を高める役に立つレスポンス
・豊かさを高める役に立つレスポンス
・新しいアイデアや洞察を与えてくれるレスポンス
・達成感、嬉しさ、幸福感、満足感、そのような何かしらいい感じを高める役に立つレスポンス

この逆に、スルーした方がいいレスポンスをまとめてみます。それを受け取り、真に受けることで、以下のような効果が発生するレスポンスは、意識的にスルーした方がいいでしょう。

・自己疑念を高めるレスポンス
・自己価値観を低めるレスポンス
・情熱、やる気が低くなるレスポンス
・思考が硬直化するようなレスポンス
・悲しさ、不幸感、不完全感、などなど何かしらダメ感を高めるレスポンス
・こうするには、こうせねばならない、AであるにはBである必要がある、などという、思考にリミッターをかけるレスポンス

創作というのは作品を通じたコミュニケーションです。コミュニケーションとは、情報や雰囲気を通じて、特定のエネルギーをやりとりし、それを互いの間で高めるという行為です。

互いを低めるコミュニケーションというものは確かに存在しています。互いを低めるコミュニケーションを望む人はそれを体験することができますし、それによって何かを学ぶこともできるでしょう。

しかし創作活動をし、作品を発表する人は、多かれ少なかれ、創作力を高めたいという気持ちを持っているはずです。その場合は、作品を介した作り手と受け手のコミュニケーションの中で、情熱や、想像力や、ワクワク感や、自信や、達成感といった、プラスの感覚を高める必要があります。なぜならそういった内的感覚によって創造力が向上していくからです。

よって、作品を発表し、そのレスポンスを受け取るというサイクルの中で、自分に都合のいいエネルギーだけを受け取るというフィルタリング能力を発揮することは、本当に大事なことです。

せっかく作品を発表したのに、「あー疲れたなー。もう何も作りたくない。疲れちゃった。私にはなんの才能もなかったみたい」という悲しいモードに入ってしまい、それによってせっかくの才能の芽を伸ばすのをやめてしまう人が本当に多くいます。

そのほとんどは、自作に対するレスポンスを適切にフィルタリングしなかったことがその原因です。

発表する場を持つことは本当に大事ですが、そこで適切にレスポンスをフィルタリングすることは、発表することと同じ程度に大事です。いわば発表は「攻」であり、フィルタリングは「守」です。攻守そろって初めてその活動を長期的に続けていくことができます。防御力がなければすぐにHPを失って旅を続けられなくなることは誰もが知っています。そしてその旅は無限に長いのです。

作品を公開し、それに対して何かしらのレスポンスを受け取り、それによってやる気が減ったなら、そのレスポンスは、あなたにとって、スルーすべきレスポンスだったのです。

もしかしたらそのレスポンスは良い意図から生じた、プラスのレスポンスであるかもしれません。でもそれを受け取って、なんだかやる気が減るような気がしたら、それはスルーすべきなのです。

その逆に、もらって嬉しい、気持ちいい、やる気が出る、ワクワク感が高まる、自作のことがより好きになる、そんなレスポンスのみに焦点を当てて、その気持ちよさを吸収することで、創作エネルギーは高まってきます。

創作エネルギーが高まることで、創作活動の自由さは高まり、のびのび感が高まり、より心のままに創作できるようになっていきます。