前回の記事から続く

『NHKにようこそ!』を分析することによって、十の失敗法則を抽出することができた。これらの、生活の中にダメさを作り出すパターンを、ひとつずつ詳しく見ていこう。まずは一つ目の法則から。

失敗法則その1.自分を攻撃し、傷つける

『NHKにようこそ!』に登場する人物たちは、以下のような自傷行為で自分を傷つけている。

  • ドラッグ乱用
  • リストカット
  • 飲酒、喫煙
  • 自分に対する悪口を言う
  • 悲観的なことばかり考える

ドラッグ乱用やリストカットなどは、明らかに誰がどうみてもハードな自傷であり、それによって生じる傷も理解しやすい。

一方、『自分に対する悪口を言う』という精神的な自傷行為は、それによって生じる傷が目に見えず理解しづらい。それでいてその悪影響は物理的なものと同じか、それ以上に甚大である。『自分』は、自分にとって、もっとも近くにいる、親密な存在である。そんな親しい存在から、四六時中、悪口を言われ続けているとしたら、それは虐待を受けていることと同じであり、それは気づいていてもいなくても、自分の中に心に深い傷を作っていく。

自傷には二種類ある。物理的自傷と精神的自傷である。それをするごとに、物理面と精神面の両方に少しずつ傷がついていく。

傷がつくと痛い。痛いと苦しい。そのため、自傷行為を行うと、人生が苦しくなっていく。

く、苦しい……。

ではここで頭を切り替えて、この失敗法則を反面教師とし、成功のための法則へと逆転させてみよう。

こんなことをしたら失敗する、ダメになるという法則があるとしたら、それを単純に逆転させることで、それは成功のための法則になるはずだ。

つまり、『自分を攻撃し、傷つける』という失敗法則を逆転させ、『自分を守り、いたわる』という行為へと変えることによって、人は成功へと近づいていけるようになるはずだ。

ということで、『自分を攻撃し、傷つける』という失敗法則から『自分を守り、いたわる』という成功法則を導き出すことができた。ではここでその成功法則について、少し詳しく考えてみよう。

成功法則その1.自分を守り、いたわる

字面からして、見るからに、心と体に良さそうである。この法則を実行することで、心身が健康に、健やかになっていき、クオリティ・オブ・ライフが向上することは明らかであると思われる。

自分を攻撃し、傷つけることにより、自分の心と体に傷がつき、それによって痛みが生じ、それによって人生が苦しくなっていく。その真逆の行為である、『自分を守り、いたわる』ことによって、自分の心と身体が癒やされていくのは当然のことだ。

それによって物理的、精神的痛みは消え、生活が快適になり、毎日が気持ち良くなり、一秒ごとに、自分への優しい気持ちが増えていく。それは自分を包み、いずれ身の回りの人たちにまで広がっていく。

では実際に『自分を守り、いたわる』ための具体的な方法を考えてみよう。

自分を攻撃し、傷つけるための具体的方法は、大きく、物理的なものと、精神的なものに分けることができた。

よって、自分を守り、いたわるための方法も、物理的なものと、精神的なものの二つがあるに違いない。物理的方法によって、身体が癒やされ、快適になり、生きることが気持ちよく感じられるようになっていく。

一方、『自分に優しい言葉をかける』などの精神的方法によって、心は癒され、強くなっていく。なぜなら自分は自分にとってもっとも親しい存在であり、そのような親密な存在からの優しい言葉は、気づいていなくとも、心に深い癒やしをもたらす力を持っているからである。

以下、物理的方法と精神的方法について、思いつく限り列挙する。

自分を守り、いたわるための

  • 物理的方法
    • 肉体をケアする
      • 身体に良いものを食べる
      • 適度に運動する
      • 自分にあった生活リズムを構築する
      • たまに温泉などに行ってみる
      • たまに自然の中に出かけてみる
      • 沢山歩く
    • 生活環境を整える
      • 部屋を掃除する
      • いらないものを捨てる
      • 観葉植物を買って育ててみる
      • 気分が明るくなる雑貨を置いてみる
  • 精神的方法
    • ネガティブな独り言のパターンに気づき、それをやめる
    • ポジティブな独り言を意識的に増やす
    • メンタルヘルスに悪い情報の摂取に気づき、それを減らす
    • メンタルヘルスに良い情報の摂取を意識的に増やす
    • 考えて楽しくなることを考える
    • 想像して気持ちが良くなることを想像する

これらを実行することは『NHKにようこそ!』の登場人物たちにとっては、最初はとても難しいことに違いない。人物たちにとって、『自分を攻撃し、傷つける』という精神的傾向は、何年もかけて醸成され、身についた、ほとんど自分と一体化した生活スタイルだからである。

深く根付いた生活スタイルを変えることは自分の人間性を根本から変えることと同義である。人はそれが自分にとって苦痛を生み出すものであっても、自分の現在の人間性を保持しようとしがちである。

また、一日や二日で、不健康な生活スタイルを捨て、健康な生活スタイルを身につけることもできないだろう。生活スタイルを変えるその過程では、何度も揺り戻しが生じ、部屋は綺麗になったかと思えばまた汚くなるだろう。食生活は健康になったかと思えば、またジャンクフードを貪る日が続くこともあるだろう。とても気分がよく、自分に対するポジティブな想いが自然に溢れ出てくる日もあれば、とても気分が悪く、自分に対する罵詈雑言や暗黒の呪いの言葉のようなものが止めようもなく脳内でリピートされる日もあるはずだ。

しかし失敗ではなく、成功を選ぶという意志があれば、時間はかかるかもしれないが、自分の中にある失敗法則を捨て、それを成功法則へと入れ替えることができる。

少しずつ、自分を傷つけることをやめ、自分を守り、いたわることができるようになっていく。

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