私はヒーリングというものに関して長年研究していることもあり、それについては一家言、持っている。今ではどのようなヒーリング体系を見ても、「あぁ、アレ系のヒーリングね」と、だいたいどういう感じのものかわかる。

だが昨日、体験したヒーリングに関しては、どういうシステムで癒やしが起こっているのかよくわからない。

昨日の深夜のことである。

ネットで「紅茶に練乳を入れて飲むと美味しい」という記事を見つけた私はさっそく試してみることにした。

だが冷蔵庫の中に練乳は入っておらず、入っているのは牛乳だけであった。ネットで調べたところ、牛乳を電子レンジで煮詰めたら練乳になるということがわかった。さっそく耐熱容器に牛乳を入れてレンジで温めた。

数分後、私は牛乳がレンジの中で煮立ち吹きこぼれているのを発見した。このままではレンジ内が牛乳まみれに成ってしまう。

嫌な予感を覚えつつも急いでレンジのドアを開けて耐熱容器をつかみとろうとしたところ、いろいろあって、牛乳をおもいっきりこぼし、手にドバっとかけてしまう。当然、牛乳は物凄く熱く、私は手に火傷を負った。

水をかけて応急処置したが凄い痛い。

痛いよー、痛いよー。

痛くて気が散って他の作業ができそうにない。

私は思った。

何とかしてこの火傷を一瞬で直せないだろうか。

あ、そういえば。

結構前に「聖なるヒーリングコード」というものをネットで見つけてiPhoneに保存していたのをふと思い出す。

ヒーリングコード、それは、特定の数字を患部にマジックで書くことで奇跡のヒーリングが生じるという魔法の数列のことだ!

たとえば、たんこぶ、という症状があるとする。

その症状に対応した数字をヒーリングコードのリストから探す。

仮にその数列が3494 4847 244だとする。(デタラメなのでたんこぶが出来ても試さないでください)

その数列をたんこぶにペンで書き込むわけである。

そうすると、たんこぶが治る、というしろものであった。

私は火傷用のヒーリングコードを探すと、その数列をマジックペンで手のひらに書き込んだ。

するとどうだろう。

書き込んだ瞬間からサーッと痛みが引いていく。

自分でやっておいてなんだが、そんなバカな、と、何か騙されているようなアンビバレントな想いを感じざるを得ない。

だがそのまま痛みは消え、まもなく私は火傷のことを忘れて、寝てしまった。

そして一夜開けると手には何の火傷のあとも残っていなかった。

なんということであろうか。

ところで、このヒーリングコード、実は前にも一度、試してみたことがあった。

それは、一年ほど前、とある自然公園に遊びに行った日のこと。

自然を沢山満喫していい気分になったその帰りがけのことである。

手を蚊に二箇所、刺された。

刺された場所はぷっくりと腫れ、私はかつて無い凄まじい痒みに襲われた。

右手を切り落としたいレベルの痒みであった。当然、近くに薬局はない。このかゆみに数時間、耐えなければいけないのかと絶望したその時、私は以前ネットで見つけたヒーリングコードがiPhoneに保存されていることを思い出したのである。

虫さされ、の項目を調べ、そこに書かれている数列を、筆記用具は無いので、想像上の光のペンで、患部に書き込んでいく。

するとどうだろう。

なんの反応もない。

痒いものは痒い。

いや、もしかしたら書き込む数字を間違えたのかもしれない。

もう一度、想像上の光のペンで、数字を患部に書き込んでいく。

するとどうだろう。

あれ?

ちょっと痒くなくなってきたような。

いやいや、そんな馬鹿な。

こんな非科学的なことで治るわけないだろ。

ほら、また痒くなってきた。

どうせプラシーボなんだよこんなものは!

と、アンビバレントな思いを抱えつつ、でもせっかくなので、もう一度、心を込めて数字を患部に想像上のペンで書き込んでいく。

するとどうだろう。

あれ?

さきほどまでぷっくりと見るからに痒そうに盛大に膨らんでいた虫さされの腫れ、その二箇所とも、なんだか腫れが引いてきたような。

痒みも引いてきたような。

おかしい。

不思議だ。

そう思いながら、私はなんども想像上のペンで想像上の数字を患部に書き込みながら、自然公園を出て、家路へと向かうバスに乗り込んだ。

バスが停車する頃には患部の痒みは完全に消えていた。

腫れも消え、どこを刺されたのか判別できないほどになっていた。

一夜開けると虫さされの事実そのものが消えたかのように、何のあとも私の手には残っていなかった。

原理はよくわからない。

とにかく助かった、ラッキー、という話である。