成し遂げたいことを、成し遂げるのは簡単だ。
一定以上のエネルギーを、その、成し遂げたいことに注ぎ続ければいい。
注ぐエネルギーの量によって、それを成し遂げるのに、どれだけの時間がかかるのかが決まってくる。
当然、注がれるエネルギーの量が多ければ多いほど、それはスムーズに成し遂げられる。
話がややこしくなるのは、人間の心の中の人格は、何百にもバラバラに分裂しているという事実による。
つまりダイエットしたい自分と、ジャンクフードを貪りたい自分という、いくつもの自分が、心の中に同時に存在しているということだ。
当然、それらいくつもの人格は『一つの統一された目標』などを持っているわけではなく、それぞれがバラバラの目標を持っている。
人格Aが掲げている目標と、人格Bが掲げている目標が、真逆であることはよくある。
これによって、『テスト前なのに遊びたい』、『締め切り前ほどゲームしたい』といった現象が発生する。
そのような短期的に現れる、エネルギーの逆方向への引っ張り合いだけではない、より長期にわたる、逆方向へのエネルギーの引っ張り合いというものも存在する。
人格Aは、この目標を達成したいと思っているが、人格Bは、その目標の達成を恐れ、なんとしてもそれを阻止せねばならないと思っているときがそれに当たる。
そういった、人格同士の目標の、長期的なバッティングがあるとき、成し遂げたいことに、一定以上のエネルギーを注ぎ続けるという作業はとても難しいものになるか、あるいは完全に不可能なものになってしまう。
そのとき人は、なんでかわからないが、どうしてもこの作業に集中できない、その作業をするのがとてつもなく辛い、あるいは外部から必ず何かしらの邪魔が入る、というような体験をするはずだ。そしてその目標は達成されることがないまま、挫折の箱にしまわれてしまう。
このような分裂した複人格の存在は、誰にとっても当たり前にあることである。
やりたいけれど、やれない。あるいは、やめたいけれど、やめられない、といった心の葛藤の裏には常にこのような複人格の同士の対立がある。
さて、このような、いくつもの複人格、サブパーソナリティの非統一状態、不調和な状態に対して、それを乗り越えるための常識的な処方としては、努力、根性というものがある。
それは短期的には効果を発揮するだろう。努力、根性とは、つまり、対立する複人格AとBのうち、一方の言い分だけを認め、他方を悪とし、力によってそれを抑圧するということである。
それは心の中の勢力の一つに、悪というレッテルを貼り、闇に押し込めることである。
当然、押し込められた勢力は、闇の中で力をつけ、いずれ必ずや、もう一方の勢力に対して反旗をひるがえすことになる。
だから努力で禁煙するのは難しい。努力でダイエットするのは難しい。
リバウンドは常に生じる。三日坊主は必ず立ち上がる。
努力や根性という手段によってそれを乗り越えるのは難しい。
特にそれが、一年、二年、三年、四年、五年と、多くの年数を必要とする大きな目標を達成しようとするときにあたっては。
努力、根性は心の中に戦争状態を引き起こす。
それよりも、心の中の勢力、AとBを、調和によって統合すべきだ。
何百にも分裂している心の中の複人格のすべては、いずれ一つの目標に向けて統一されるべきである。その統一はハイヤーセルフによってなされる。
図?に描くとこうなる。
(意識レベル上)
ハイヤーセルフ
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日常的人格
〜〜〜〜〜〜〜〜
複人格A、B、C、D、E、F、G・・・・・・
(意識レベル下)
日常的人格の下部に、たくさんの複人格が存在している。それはいわば、通常の意識のすぐ下にある薄暗い部屋の中で、たくさんの小さな子供のような人格がバラバラに動き回っているようなものだ。その様子は極めて無秩序であり、学級崩壊した教室のようである。
こいつらを統合するには、それよりも上のレベルの存在が必要だが、その作業は日常的人格で行うことはできない。
なぜなら日常的人格というのは、実は複人格とほとんど同一レベルの存在であり、同じ程度の心の力、同じ程度の狭い視野しか持っていないからである。
崩壊した学級に調和をもたらすためには、真に広い視野を持った、真に強く優しい心の力を持った、年長の先生が必要だ。
そのような自分の意識の中の、強い統合力を持った存在を、ハイヤーセルフと呼ぶ。
次元が、レベルが、 本当に高い、そんな自己であるから、それは『ハイヤー』な『セルフ』なわけだ。
同レベルのセルフであれば、それは学級崩壊中のクラスの中であたふたする一児童にすぎず、そんなものがどれだけいても、学級を統合することはできない。
そのハイヤーセルフはとても優しく、学級の誰にとっても納得できる方法で、クラスの皆の意識を統合してくれる。
それによりリバウンドはなくなり、エネルギーの逆方向への引っ張り合いはなくなり、成し遂げたい目標に向かって、この自分というシステム全体が効率よく稼働していけるようになる。
これにより夢は次々叶い始める。