悪い部分をジーっと見ること。そしてその「悪さ」の感覚を心の中で反芻すること。それが今日、詳しく見てみる失敗法則だ。
失敗法則その4.悪い部分にフォーカスする
これは様々な失敗法則の中でも、特に破滅的な効果をもたらすものの一つである。
人間の意識は、フォーカスした対象を拡大する力を持っている。この働きは二つの段階に分けることができる。
一つ目の段階は、フォーカスした対象の性質が、心の中で拡大するというものである。
二つ目の段階は、フォーカスした対象が、物理レベルで拡大するというものである。
一つ目の段階はまあ、それもそうだなと常識的に納得できるものであると思う。
実際に、簡単な実験によって、その効果を体験することができる。
実験手順
- 道を歩き、地面に落ちている、何か汚い、不快感を催すものを探す。
- 見つけることができたら、そこで足を止めて、じっとその汚いものを見つめ、不快感を味わう。
この作業によって、心の中に不快感を増やすことができたら、実験は成功である。
見事、意識の力によって、フォーカスした対象の性質を、心の中で拡大させることができた。
第二段階の『フォーカスした対象が、物理レベルで拡大する』という効果は、第一段階の効果が生じたあと、しばらく経ってからディレイとともにやってくる。
第二段階の効果は、生活の中で、不快なものを、以前よりも多く目にするという形で現れる。
おそらくは、この実験をする前よりも、多くの不快なものが道に落ちていることに気づく、というような形で。
この現象についてふた通りの説明をすることができる。
『単に今まで気づかなかったものに気づくようになっただけ』というのが一つ目の説明である。
二つ目の説明は、『量子力学的な、なんかの効果で、意識の力により、自分が体験する世界の中に、不快なものが出現する確率を、物理的に上昇させたのだ』というものだ。
この後者の説明が、いわゆる「引き寄せの法則」なるものの作動原理である。
それは、心の中にある思考や感情や感覚と共鳴するものが、量子力学的な、なんかの効果で、その意識主体の体験する世界に引き寄せられてくる、というものだ。
よって、意識主体の心の中に、不快感が沢山あるとき、不快なものが、たくさん引き寄せられてくるということになる。
これが引き寄せの法則である。
もしこのような法則が実際にこの世に存在し、機能しているとしたら、なんという恐ろしいことだろうか。そのとき人が、不快さのデフレスパイラルみたいなものに落ち込むことはあまりに容易だ。
一度、不快なものに意識を集中し、心の中に不快さを蓄積させたが最後、心の中にあるその不快さのヴァイブレーションが、さらなる不快なものを物理レベルで引き寄せ始めてしまう。
それによってさらに人は不快になり、心の中に不快さを蓄積させ、それが新たなる不快な現実を引き寄せ始める。
これはまさに不快さの核融合というべき現象である。このように閾値を超えて一箇所に集合した不快さは、自らのうちから無限の不快さをジェネレートしては新たなる不快さを引き寄せ始める。
このような状態から抜け出すには、不快さの真逆の性質を持った対象、すなわち自分にとって心地よい性質を持った対象に、意識をフォーカスし、心の中に快適さを蓄積すればいい。
そうすれば、引き寄せの法則に従って、快適さのヴァイブレーションを持った物理的事物が、その意識対象が体験する世界の中に引き寄せられてくるはずだ。
成功法則その4 いいことにフォーカスする
この一連の記事のネタとして使っている『NHKにようこそ!』という作品の製作に関しては、作者として永遠に、無限に泣き言を吐くことができる。
もう前世かと思えるほどはるか昔に製作された感のあるこの作品であるが、その際に私が体験した苦痛の思い出のメモリーは、未来感ただよう2017年現在にあってもなお濃厚に私の脳に焼き付いている。
まったくもう。
この作品に関しては、辛い思い出が九割九分九厘だ。
本当に辛かったんだってば!
と、「NHKにようこそ!」に関しては、いつまでたっても、ついつい癖で、悪い部分にフォーカスしようとしてしまう私である。泣き言は無限に吐ける。
だが、このような意識の使い方によって、私の心の中に、無用な辛さが増幅されている可能性がある。思い出の中の辛さにフォーカスすることで、新たなる辛さの感覚が引き寄せられ、心の中にどんどん蓄積されていっている可能性がある。そのせいで、いつまで経っても辛い失敗感が癒やされず、拭い去れないようになっている可能性がある。
こんなのもうヤダ!
ここらでそろそろ、本腰を入れて『NHKにようこそ!』製作についての、良かった部分に意識を向けてゆきたい。そして私の二十代は素晴らしい成功タイムだったというふうに気分を書き換えていきたい。
ということで以下、『NHKにようこそ!』の内容や、その製作作業について、こんなところがよかったという点をリストアップしてみることにする。
(この文章は私の心の癒しの旅路のジャーニーなので、読者のみなさんは優しい温かい目で見守ってください)
- 本文を凄まじい速さで書き上げることができた。週刊連載で、本文をわずか12週で書いた。瞬間最大風速としては心の師である故栗本薫先生並の速さが出たのではないか。
- さまざまな技術的なアイデアを試すことができた。九章の、ドラッグの効果で時間をシャッフルするところとかが見事に成功したと思う。当時はやっていた時系列シャッフル系映画の影響ではあるが、時間を現時点に戻す瞬間に強烈なエモーショナルな効果を生じさせることができた点などに、独自性を出せたのではないかと思う。
- 山崎と佐藤が小学校に盗撮に行くところは、本当に楽しく書けたと思う。浮かんだアイデアを上手に形にすることができた。
- 当時はまっていて、今も私の思想的なベースとなっているグノーシス主義的世界観を、娯楽小説の枠組みの中に落とし込むことができた。
- 夢で見たヴィジョンを作中に使うことができた。それにより作品に奥行きが出たと思う。
- 意識を目的に集中することで、まさに引き寄せ的にアイデアが向こうからやってくるという体験を濃厚に味わえた。例えば電車の窓から見えた看板の文字や、そこらへんに転がってる本などに、アイデアのヒントがジャストミートで書かれているという。これはいわゆる『フロー状態』とか『ゾーン』とか言われている精神状態になると誰でも体験できると様々な本に書かれているが、それを楽しく味わうことができた。
- 私の中で超えられざる大きな山としてそびえ立っていた、エヴァンゲリオンやその他いろいろ強い影響を受けた作品を、私なりの方向性で私なりに超えてみるという目標が達成できた。
- 私の文章執筆の原体験となっている、インターネット黎明期のテキスト系サイトの文体を小説という形に有効活用できた。
- 人生の次のテーマにつながる課題、宿題を、執筆作業の中で見つけることができた。
ふー。こんなところかな。
だんだん気分が良くなってきた。
気分が盛り上がってきたぞ!!
やったー! バンザイ!